2-B-1【Bさんの行動分析1】
【Bさんの印象に残っている経験】
「準硬式野球部の経験です。高校時代に野球をしていなかったため技術的にも体力的にも遅れていましたが、3年次には主将として1部リーグ昇格に貢献することができました。
この経験を通じてコミュニケーション能力を身につけることができたと思います。」
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【準硬式野球部】
Q 硬式ではなく準硬式野球部だったのですか?
A はい、小中学校では野球部に所属していたのですが高校では野球をしていなかったので、硬式野球部に入るのが不安だったので準硬式野球部に入部しました。
Q 部活動ではなくサークル活動で野球をすることは考えなかったのですか?
A 本当は高校時代も部活動に参加していなかったので、大学では部活動に取り組みたいと考えました。
Q 部員は何人くらいいるのですか?
A 30名前後で私が3年生の時は28名です。
Q なぜ高校時代に野球部に参加しなかったのですか?
A 入部したいと思っていたのですが、通学時間が長かったことと練習が終わった後に帰宅するための交通手段がなかったのであきらめました。
Q 練習は大変でしたか?
A はい、周りは高校時代の経験者のひとばかりだったので、ついていくのは大変でしたが、先輩方や同学年の仲間に助けてもらいながら頑張りました。
その結果、2年の夏にはベンチ入りすることができました。
Q なぜ、先輩方や仲間が助けてくれたのですか?
A 皆いい人たちだったというのが一番だったと思いますが、
早く力をつけたいという僕の気持ちが伝わったのかもしれません。
Q なぜ伝わったと思いますか?
A 部の練習はもちろん頑張りましたが、それ以外にも自主練習に取り組んでいたので感じてもらえたのかなと思います。
Q 3年次に主将になったとありますが、なぜ主将になったのですか?
A 一つ上の先輩方に指名されて主将をすることになりました。
Q なぜ主将に指名されたのですか?
A 人を引っ張るタイプではないのですが、チームのみんなのことをよく知っていたからかなと思います。
Q よく知っていたというと、打撃スタイルや守れるポジションとかですか?
A はい。
Q 他には?
A どんな課題をもって練習しているのかとか、気持ちの状態とかも気にしていました。
Q 個人的なことも知っていたということですか?
A わりと知っていました。
Q どんなことを知っていたのですか?
A おおまかな出身地や学部、研究室、アルバイトのこととか色々です。
Q なぜ色々知っていたのですか?
A 私の地元ではお互いのことを知っているのは普通だったので、、、。
Q 地元はどんなところなのですか?
A 地方都市のはずれにある町です。私たちが卒業した中学校は統合さて、今はありません。
Q 主将は大変でしたか?
A リーダー役をする経験があまりなかったので、どうすれば良いのか戸惑いました。
Q どうやって乗り切ったのですか?
A 自分がチームを引っ張るのではなく、仲間と相談しながら一緒に運営していくことに気づいてからスムーズになったと思います。
Q 主将として何を心がけましたか?
A 話し合いの場をできるだけ多く持つことを心掛けていました。
Q どんな話し合いですか?
A 主に練習方法です。
「一部リーグ昇格」はチームの目標としてあったので、それを実現するためにどうすれば良いかを話しあいました。
Q 話し合いの場ではどんな役割をしていましたか?
A チームやメンバーの状態を伝える役割をしていたと思います。
Q チームやメンバーのどんな状態を伝えていたのですか?
A 各メンバーの得意なことや苦手なところ強化できるところなどを伝えることで、チーム全体の状態を伝えていました。状態を把握したうえで相手チームに勝つための方法をみんなで考えていました。
Q 話し合いの場を設ける以外に何かしていましたか?
A メーリングリストなどでスケジュールや話し合いの内容などを、できるだけこまめに連絡するようにしていました。
Q 他には?
A 「ぼっち」ぎみの人には話の輪にはいるきっかけをつくったりしていました。
Q 一部リーグに昇格できたとありますが、どのくらい大変なのですか?
A はい、創部27年目なのですが私たちの二つ上の先輩方の学年で初めて一部リーグに入ることができました。一つ上の学年で再び二部に降格することになったのですが私たちの学年にとって「一部リーグ再昇格」は最大の目標でした。
Q 一部に昇格できたのはなぜだと思いますか?
A 皆でチーム状態を意識しながら強くなるためにどうすれば良いのかを考え、練習や試合に取り組んだからだと思います。
2-A-2【Aさんの行動分析2】
AさんとのQ&Aの再現を続けます。
「飲食店のアルバイトです。最初は大変でしたが努力を積み重ねることで、
次第に慣れてきて様々な仕事を任されるようになりました。
責任感を持つことの大事さと、お金を稼ぐことの大変さを学びました。」
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Q 一番つらかったことはなにでしたか?
A 「周りを見て動け」と何度も言われたことです。
Q 「周りを見て動く」とはどういうことですか?
A 例えば、
お客様にいわれる前に
「注文を取りに行く」「お皿を下げに行く」
「お茶を出しに行く」「子供用の椅子をだす」
「いつもの席を準備する」
などです。
Q お客様してほしいことに気づいて動くということですか?
A ほかにもありますが、そこが一番大事だとおもいます。
Q なぜ、そこが一番大事なのですか?
A お客様に少しでも心地よい時間を過ごしていただくためだと思っていました。
Q それはなぜですか?
A 常連のお客様が多いので、「また来たい」と思っていただくためだと思います。
Q お店の方にそういわれたのですか?
A 直接言われたことはないのですが、お店の皆さんを見ているうちにそう思うようになりました。
Q 「周りを見て動く」というのは「お客様を見て動く」ということですか?
A お客様はもちろんそうですが、お店全体を見て動くことも大事だと思います。
Q 「お店全体」とはなにですか?
A 私はホールでの仕事をすることが多かったのですが、
「客席」「ホール」「調理場」「カウンター」のすべてです。
Q よくわからないのですが?
A 例えば、同じ料理の注文が続いていたらその料理に使われているお皿をできるだけ先に引いて、お皿が足りなくなるかもしれないことを洗い場に伝えるとか、
不慣れなスタッフがいたらタイミングをみてサポートに入るとか、
色々です。
Q 「お店全体」のためにやった方がよいことはたくさんありますよね?
A はい、、、
Q なので?
A 「自分ができることで何をするのが一番いいのか」を考えていたと思います。
Q 「周りをみて動く」ことはできるようになりましたか?
A 最後まで「こうすればよかった」と思うことが多かったと思いますが、
お客様に名前をおぼえてもらえたり、
お店の方に「あの時は助かった」と言っていただけることもあったので、少しはできるようになったのかなと思います。
Q 楽しかったことを教えて下さい。
A 私の名前をおぼえてくださるお客様が増えてきたときです。
なんか「役に立っている」気がしてうれしかったです。
Q お疲れ様でした。
「このアルバイトの経験で学んだこと」を、
もう一度、整理しなおしてみてくださいね。
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2-A-1【Aさんの行動分析1】
ここからは実際にあった事例を見ながら、
行動分析の手法について考えていきたいと思います。
「どんな状況で」
→「どのように考え」
→「どんな課題と向き合い」
→「何をしたのか」
の順番で、
「いつ」「どこで」「なぜ」「どのような」等の質問を繰り返していきます。
自分自身でやるのもよいですが、
仲間と助け合って
相互で質問→回答をする方が効果的ですので、
ぜひ仲間を作って協力して取り組んでみてください。
【Aさんの印象に残っている経験】
「飲食店のアルバイトです。最初は大変でしたが努力を積み重ねることで、
次第に慣れてきて様々な仕事を任されるようになりました。
責任感を持つことの大事さと、お金を稼ぐことの大変さを学びました。」
*このままでも記入して大丈夫なレベルなので、
もっと初歩的な内容から始めても大丈夫です。
【どんな状況だったか】
行動分析をするプロセスでは
「どんな状況だったか」から始め、
一番、時間と手間をかけるのをおすすめします。
以下、項目を区切って
Q&Aを繰り返した内容を再現していきます。
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【飲食店でアルバイト】
Q なぜアルバイトを始めようと思ったのですか?
A サークル活動や遊ぶお金を自分で賄いたいと思ったからです。
Q なぜ飲食店でアルバイトをしようと考えたのですか?
A 大学時代に接客の経験をしたいと考えたのですが、
私が食べることが好きなので飲食店だったら働きやすかなと考えました。
Q 「飲食店」とありますが、どんなお店ですか?
A 通っている大学の近くにある居酒屋さんです。
Q なぜそのお店を選んだのですか?
A 大学に近いというのが一番の理由ですが、最初に面接に行ったときの雰囲気が良かっので、そのお店で働きたいと思いました。
Q なぜ大学に近い場所が良いのですか?
A 面白そうな分野が見つかったので関連のある講義やセミナーにできるだけ参加したかったのと、サークルの練習のあとにでも行けるところが良かったからです。
Q 「雰囲気がよかった」と言われましたが、どんな雰囲気だったのですか?
A 「かなり忙しそうだな」という感じでしたが、ギスギスしていないというか、あったかい感じがして、なじめそうな気がしました。
Q なぜなじめそうな気がしたのですか?
A 私があったかい雰囲気というか、ちょっと厳しいときも笑い声がでるような雰囲気にしたいと思うところがあるので、合うかなと思いました。
Q どんな「居酒屋さん」ですか?
A 家庭的な料理を出すのですが、
家ではできないような「けっこう凝った料理」を出すお店です。
Q チェーン店ではないのですね?
A 大将ご夫婦と調理師さん2名で運営されているようでした。
Q アルバイトの方は何名いました?
A 5人いました。週末は全員出てくるのですが、ほかの日は2人か3人が出ていました。
Q 何席くらいあるお店ですか?
A カウンターが8名と4人用のテーブルが8つありましたので、、、満席で40名くらいだと思います。
Q どんなお客さんが多かったですか?
A 年配のお客様が多かったですが、週末は家族連れのお客様も来られていたので幅広い年代の方が来られていました。
Q 初めて来られるお客さんが多いお店ですか?
A わかりづらい場所にあるので初めての方は少なかったと思います。
どちらかというと常連さんが多いお店でした。
Q 大学が近いので学生さんも多かったのでは?
A 学生さんにはちょっと高めというか、料理にこだわりがあるお店でしたので、
学生にはちょっと合わない感じだったとおもいます。
Q ちょっと高めというと、どれくらいですか?
A お酒の量にもよりますが、客単価でいうと3000円前後だったと思います。
Q 3000円くらいだと学生さんにもどうにか払える金額ですよね?
A 学生だと3000円では、お酒も料理もものたりなく感じる量になるとおもいます。
Q カウンターがあるといわれましたが、調理場と客席がつながっているお店ですか?
A カウンターは大将が担当されていて、
調理場は奥の客席からは見えないところにありました。
Q 最初はどんな仕事を担当していたのですか?
A お客様が帰られた後の下膳と洗い物から始めました。
Q 大変でしたか?
A はい、大量の食器を洗うので効率的なやり方を教えてもらいながら始めたのですが、
洗い方を覚えてくると、今度は食器をセットすることも考えなけらばならなかったり、とにかく覚えることが多かったです。
Q どうやっておぼえていったのですか?
A 帰宅してから教えてもらったことを思い出してノートに整理したり、
できることは自宅でも練習をしたりしました。
Q どのくらいで慣れてきましたか?
A 1か月くらいたってきたころだと思います。
教えていただいていたことを繰り返すうちに動きがスムーズになっていったと思います。
Q 慣れるためにほかに何かしましたか?
A すごくできる先輩がいたので、その方の動きを観察して真似をするようになりました。
観察していると様々な工夫をされていることがわかるようになり、感心しました。
Q 慣れてきたら色々な仕事をするようになったとありましたが、
A お席の準備や出食を経験したあとに注文をうけたり、レジ精算などもするようになりました。
Q 大変でしたか?
A 一つ一つ覚えていきましたので、最初ほどではなかったと思います。
あと、他のスタッフと話しやすくなっていたのも大きかったと思います。
Q 最終的にはどんな役割をしていたのですか?
A 特に決まってはいなかったですが、アルバイトのリーダー役をしていたと思います。
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「どんなお店で働いたのか」という質問でしたが、
Aさんがとても多くの情報を把握していたことがわかりますよね。
次回もAさんのQ&Aの再現を続けていきますので、
参考にしていただければ幸いです。
1-4 なぜその経験を選んだのか。
【○○を伝えるためにはこの経験が良いと思って】
という方が多いと思います。
○○には
「協調性」
「リーダーシップ」
「コミュニケーション能力」
「積極性」
「企画力」
などでしょうか。
最初は「こんなことを言わなければならない」
という圧迫感があるのは自然ですので、
「○○を伝えるために」から始めても大丈夫ですが、
経験の検証していく際は、
「このことをアピールするために」
を外して取り組むことをおすすめします。
1-3 【面接カードが書けなかった方へ 2】
【Aさんの経験】
「2年次にショッピングセンターで試食販売のアルバイトをしました。最初はなかなか手に取っていただけなかったのですが、積極的に声をかけることでコミュニケーションの力が身に付き、購入してくださるお客様も増えました。」
「私にはいいところなんかありません」
「他人にいえるような経験はしていません」
と言っていたAさんが、
やっと書いてきてくれた経験です。
私が「なんで試食販売のアルバイトを選んだの?」と尋ねると、
Aさん
「人見知りで周囲となじめなくて、このままでは何もできなくなると思ったので」
と話してくれました。
Aさんは農村部の「だれもが知り合い」という環境での生活から、
地域の中核都市にある大学に進学し新生活に入ることになり、
「知らない人たち」の中で人となじめない時期をすごしていたそうです。
一年間その状態が続き「このままではいけない」と
「知らない人」に話かけなければならない「試食販売のアルバイト」を始めたそうです。
「自分にとって大事な経験」こそが振り返る価値のあるものです。
「小さな進歩を喜ぶ力」が成長につながっていることを大事にしましょう。
1-2【面接カードを記入できなかった方へ】
【記入できなかった理由】
中々、記入できなかった方が多いと思います。
「記入欄が小さすぎてどう書けばよいかわからず記入できなかった」
「書くためにする作業が多すぎるので結局かけなかった」
「他人に語れるようなすごい経験をしたことがない」
【記入欄が小さすぎる】
ほとんどの方が、記入欄が小さすぎると感じたはずです。
小さいだけではなく罫線まで引かれていて、
100字程度しか記入できません。
「こんなカード作れるのだろうか」と不安を感じる場合もありますが、
行動分析を進めていく中で、
この欄内に記入する方法が見えてきますので大丈夫です。
記入欄に収めるのが厳しければ今ははみ出してもかまいませんし、
ノート等を利用して記入してみるのもありです。
「記入欄が小さすぎる」ことを実感できたことは
とても良い経験になりますので、大事にされてください。
【書くためにする作業が多すぎる】
その通りです。
面接だけではなく、
2次対策には手間と時間がかかります。
採用試験を終えた方の多くが
「学科対策も大変だったけど、2次対策の方がずっと辛かった」
と語られます。
【他人にいえるような経験がない】
すごい経験を選ぶ必要は全くありません。
自分にとって大事な経験を選べば大丈夫です。
コンピテンシー面接では
「行動の結果」ではなく、
「行動の過程」を検証するのです。
1-1【行動分析から始めよう】
【コンピテンシー面接が主流】
10年ほど前から
公務員試験の面接ではコンピテンシー面接が導入されてきて、
公務員採用試験では主流になってきています。
【コンピテンシー面接とは】
2006年度の国家総合職採用試験から導入された人物評価の手法で、
その人の実体験にもとづいた過去の行動を検証することにより、
「行動特性」「資質」「適性」
などを理解する考え方です。
本やホームページ等で詳細を案内していますので、
まだ概要を把握していない方は、一度目を通してみてください。
現在では多くの機関でこの手法が採用されているので、
面接対策を始める際は
コンピテンシー面接を受けることを前提に
準備を進めることをおすすめします。
【行動分析をしよう】
コンピテンシー面接では「行動の結果」ではなく、
「どんな状況で」
「何に取り組み」
「どのように考え」
「どんな課題と向き合い」
「何をしたのか」
を聞かれます。
面接対策は
自分の行動を振り返り検証する「行動分析」から始めましょう。
【国家総合職の面接カード】
コンピテンシー面接の概要がわかれば、
国家総合職の面接カードが下記の構成になっているわけが
なんとなく理解できると思います。
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《これまでに取り組んできた活動や体験》
達成感があったと感じたり、
力を入れてきたりした経験について、
どのような状況で(いつ頃、どこで、誰と等)、
どのようなことをしたのか簡潔に記入してください。
- 学業や職務において
- 社会活動や学生生活において
- 日常生活その他(資格、特技、趣味、社会事情など関心のある事等)において
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《志望動機》
これまでの体験や自分の長所をふまえ、
国家公務員としてどのような貢献ができるのか、
具体的に記入してください。
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【国家総合職の面接カードを作成してみよう】
行動分析をはじめる際は
「国家総合職」の職務を「自分が志望している機関」の職務に置き換えたうえで、
国家総合職の面接カードを作成してみるのがおすすめです。
何回も作り直しをすることになるので、
完成度の高いものを目指さないのが大事です。
【最初は一項目だけ】
《これまでに取り組んできた活動や体験》の
「一項目だけ」に絞って
書き始めた方がよいと思います。
自分の行動を何回も見直し掘り下げる作業をすることになるので、
いくつもやろうとすると負担感が大きくなりますし、
一項目について深く考察した経験をすれば、
そこで得た手法をほかの項目に適用することができます。